僧形八幡影向図(仁和寺)神の表現が多様化/鎌倉時代の美術

僧形八幡影向図

本図にえがかれている建物は寺院の一隅と思われる。扉が片開きであるなど、現実にそぐわない点があるが、おそらく後陣ではないかと想像される。建物の描写がきわめて簡素であるのに対して、八幡神と二人の貴人は文様にいたるまで細かく表現されている。八幡神の装束は、茶地に緑色唐草文・金銀菊菱文の僧綱襟を立てた袍裳、遠山袈裟、緑地に金色唐草丸文散しの横被、裾赤白地の袴に草鞋、という装いである。跪坐してこれを礼拝する二人の貴人のうち黒袍を着けるものは垂纓の文官姿であるのに対して、茶色の袍を着る人物は巻纓に老懸をつけた武官の装いであるが、ともに笏を手に持つ。八幡神は貴人より大きくえがかれており、すでに常人と異なることがわかるが、それ以上に内側の壁に映った影の存在がいかにも影向図らしい神秘感を生み出すことに成功している。建物内部の影が見えるように、絵師は外壁と色を変え、さらに外壁の一部を省略するなどの工夫をしている点も注目される。