八角三重塔(安楽寺)日本に現存する近世以前の八角塔としては唯一のもの/室町時代の美術

八角三重塔

全高(頂上から礎石上端まで)18.75メートル。構造形式は八角三重塔婆、初重裳階(もこし)付、こけら葺である。(四重塔にも見えるが一番下の屋根はひさしに相当する裳階(もこし)である。)この塔は日本に現存する唯一の八角塔であるとともに、全体が禅宗様で造られた仏塔としても稀有の存在である。組物(軒の出を支える構造材)を柱の上だけでなく柱間にも密に配する点(詰組)、軒裏の垂木を平行線状でなく放射状に配する点(扇垂木)、柱の根元に礎盤を置く点、頭貫(かしらぬき、柱頭を貫通してつなぐ水平材)の端に木鼻(彫り物)を施す点など、細部に至るまで禅宗様で造られている。内部の天井の形式や八角の仏壇も他に類を見ないものである。内部には禅宗寺院には珍しく大日如来像が安置されている。この塔の建立年代は、従来、漠然と鎌倉時代末?室町時代始め頃と考えられていたが、2004年奈良文化財研究所埋蔵文化財センター古環境研究室による年輪年代調査の結果、この三重塔の部材には1289年(正應2年)に伐採した木材が初重内部の蝦虹梁に使われていることが判明した。このことから当塔は13世紀末、1290年代に建築されたものと考えられ、1320年建築の功山寺仏殿を凌ぐ日本最古の禅宗様建築である可能性が高くなった。