薬師如来立像(神護寺)平安初頭の一木造りの優れた仏像/平安時代の美術

金堂本尊。像高170.6センチ、カヤ材の一木造。唇に朱を、眉、瞳などに墨を塗るほかは彩色などを施さない素木仕上げの像である。目を細めた森厳で沈うつな表情と体躯のボリューム感は、親しみよりも威圧感を見る者に与える。図式的・観念的に整えられた衣文などに平安時代初期特有の様式が見られる。下半身では両脚間に「U」字形の衣文を縦に連続させ、その左右に平滑な面をつくって大腿部のボリュームを強調しているが、こうした衣文形式も平安時代初期の如来像に多く見られるものである。図像的には、薬壺を持つ左手を垂下させず胸の辺まで上げる点と(ただし両手先は後補)、右肩から右腕にかけて「横被」と呼ぶ布をかける点などが特色である。『神護寺略記』に引用する弘仁期(810 – 824年)の資財帳に「檀像薬師仏像一躯」とあるのが本像に当たり、神護寺の前身寺院である神願寺または高雄山寺のいずれかにあった像と思われるが、どちらの寺に属していた像であるかについては定説がない。なお、両脇侍の日光・月光(がっこう)菩薩立像(重要文化財)は後補部分が多く。薬師像とは作風も異なっている。日光像の腰から上、月光像の膝から上は後補である。